ドームふじだより No. 16
−さまざまな霜−


 これは何だと思いますか?白いバラかカーネーションの花びら?魚のうろこ?正解は霜の結晶です(写真1)。写真2をご覧下さい。基地の建物の中から、ドアを開けて掘削場に向かう通路に出てきたところです。指を指しているあたりの霜を拡大したのが写真1です。


写真1 さて、なんでしょう?


写真2 居住区を出てすぐの所

 ちなみにこのドア、何かのドアに似ていませんか?そうです、冷凍庫のドアです。ドームふじ観測拠点の建物は日本では冷凍庫として使われているものなのです。冷凍庫は中の冷たさを外に逃がさないように断熱しているのですが、ここでは逆に外の冷たさを中に入れないように断熱しているのです。建物の中は25℃くらい、掘削場に向かう通路は暖房されていないので-45℃くらいです。ドームふじ附近の外気は低温なので空気中にはほとんど水分は含まれておらず、ものすごく乾燥していますが、建物の中の空気は暖かく、炊事などの影響で湿度は25%くらいになっています。この水分を含んだ暖かい空気が、ドアを開けたときに通路側に出て冷やされると、含まれている水分が空気中に留まっていられなくなって霜となります(これを凝結といいます)。霜の結晶は、雪と同じで形成される時の温度と湿度によって形が変わりますので、ドアに近い、建物の中の空気が良く当たるところほど大きな結晶になっています。条件によっては写真3の様な結晶になったり、ドアから離れた場所では空気中の水分が少ないので写真4の様にさらに小さな結晶になります。


写真3 大きな霜の結晶


写真4 小さな霜の結晶

 建物の外はどうでしょうか。写真5は雪面にできた霜です。気温より雪面温度が低いと、空気中の水分が凝結してこのような霜になります。写真6は直径6mmの黒いロープについた霜です。空気中の水分が少しずつ凝結してできたものです。弱い風でも落ちてしまうので、気温が低くて風が弱いドーム基地ならではのものと言ってもいいでしょう。


写真5 積雪表面の霜


写真6 ロープに付着した霜

ドームふじだより No. 17
−オーロラの季節始まる−


 3月18日の夜、本格的なオーロラが見えました。オーロラの出始めは白からうす緑色の雲の様ですが、次第に色が濃くなり、動きが活発になります(写真1)。この日は満月で、写真2の向かって左の方には月の光が見えますが、オーロラはさらに活発になり、写真3の様に明るさが増し、裾の赤いカーテンが風に揺らめく様に見えたり、頭の真上に来て、カーテンを下から覗き込むように見えたりします。この日は全天に拡がるすばらしいショーを見せてくれましたが、本当にすごい時にはただ見とれるばかりで、皆、感動のあまりシャッターを押すのを忘れてしまいました。
 ドームふじ観測拠点の最低気温は3月15日に-60℃を下回りました。夜も次第に長くなり、いよいよ本格的な冬が近づいて来ました。


写真1 出始めのオーロラ


写真2 左のオレンジ色は月の光


写真3 カーテン状オーロラ

ドームふじだより No. 18
−初のブリザード−


 3月15日夜から吹いていた風は次第に強まり、16日午前8時すぎには風速が10.5 m/s(最大瞬間12.0m/s)に達し、視程も200 m程度に落ち、今越冬初のC級ブリザード(暴風雪)と認定されました。写真1、2は空は晴れているものの降雪と地吹雪で全体にかすんで視界が悪い状況です。写真では雪面に近いところを流れている地吹雪が見えにくいと思いますが、実際は雲の上に立っているような感じがします。


写真1 ブリザードの様子(観測サイト)


写真2 ブリザードの様子(基地)

 南極でのブリザードは昭和基地とここドームふじ観測拠点で独自の基準を作ってA、B、C級に分けています。一番弱いC級の基準は、ドームふじでは視程1km未満、風速7m/s以上が6時間以上続いた状態となっていますが、もともと風の強い昭和基地では、C級でも風速は15m/s以上になっています。前回越冬した時に経験した昭和基地のブリザードは、目の前にかざした自分の手が見えないほどの暴風雪でした。これに比べるとここでのブリザードは明るい感じがしますが、この日の平均気温は-50℃、昭和基地とは比べ物にならないくらいに低いので、やはりとても厳しいものであることに変わりはありません。
 ブリザードが去った後には物の風下側に雪が吹き貯まるドリフトがあちらこちらに残されます。写真3は雪面においてあった段ボール箱です。風下側にドリフトが付き、一番下の箱はすでに埋まっています。


写真3 ブリザードで埋まった野外デポ