ドームふじだより No. 19
−天使のささやき−


 みなさんは「天使のささやき」をご存知でしょうか。気温が-50℃を下回る風の弱い日に外に出て、自分の吐いた息が風で耳もとにかかるようにします。そうすると、息を吐いた直後に「シュワッ」「シャワッ」っというような小さな音が聞こえます。これが「天使のささやき」と言われているもので、吐いた息が凍る時の音のようです。気温が低くなるほど大きな音に聞こえますが、それでも小さな音なので、まだ誰も録音には成功していません。もちろん音なので画像をお見せすることもできません。
 写真は全く関係ありませんが本格的な冬に備えて帽子の耳の部分と羽毛服のフードの縁に毛皮を縫い付けた様子です。今の気温ではまだちょっと大げさですが、横からの風が防がれてなかなか良好です。ただ耳を塞いでいるので音が聞こえにくくなるのが難点です。


冬支度(本文とはかなり関係ありません)

ドームふじだより No. 20
−四角い太陽−


 日没直前の水平線(雪はもともと水なので水平線?)に四角い太陽が見えました。これは蜃気楼の一種です。普通、空気は地上から上空に行くほど温度が低くなりますが、雪面の温度が低い特殊な状態では雪面近くの空気の方が逆に温度が低くなります。これを逆転層といいます。この雪面近くの冷えた空気とその上の空気との間の温度差で生じた層で光が屈折して、あたかもそこに鏡があるように見えるのです。四角い太陽は太陽の光がこの鏡のような層に反射して見えるために起こったものと考えられます。


写真1 四角い太陽


写真2 拡大写真

ドームふじだより No. 21
−昇らない煙−


 昔から煙は上に昇るものと言われていますが、ここドームふじでは煙は上には昇りません。写真1をご覧ください。普通ならば上に行くところですが、煙は冷やされて雪面近くに漂います。風はそれほど強くないので、風の力で押しつけられているのではありません。周りの気温が低いので、吐いた息が白く見えるのと同じように、普通よりもはっきり白く見えるのですが、どこまで行っても消えずに見えます。写真2は見やすいように夕日に染まったところを撮影しました。写真3はずっと先の方の、水平線まで続いている夕日に染まった煙です。


写真1 昇らない煙


写真2 夕日に輝く煙


写真3 どこまでも地を這う煙