ドームふじだより No. 31
−ウィンチ設置−


 深層掘削を行うドリルをつり下げるケーブル用のウィンチ(巻き揚げ機)を設置しました。約3000mまで掘削する計画なので、このウィンチはとても頑丈な作りで、ケーブルを巻き付けていない状態でも2トン以上あり、掘削準備の難関のひとつです。この重量物を雪の上に設置するので、基礎は何層にも木を組んで丈夫にしました(写真1)。
 雪面から4mほどの深さのこの辺りの雪はざらめ状で、踏んでも踏んでもなかなか固まりません。そこで登場するのが水セメントです。これは極低温だからこそできる方法で、基礎として固めたい場所を掘って水を撒き、雪と混ぜ合わせて凍らせていくものです(写真2)。まだ暖房をしていない新掘削場の気温は外部とほぼ同じですから(この日は-67℃でした)、水はあっという間に凍ってしまい、がっちりとした基礎が完成しました。ウィンチは、枕木の上に金属パイプをレールのように敷いた上を、前からは小型ウィンチで引っ張り、後ろからは皆で力を合わせて押し、旧掘削場から新掘削場まで少しずつ移動させました(写真3)。基礎の上に固定して移設が完了(写真4)。記念写真を撮りました(写真5)。寒いので吐いた息が白くなっていつまでも漂っているのですぐに視界が悪くなってしまいます。


写真1 基礎の材木を設置中


写真2 基礎を水セメントで固める


写真3 ウィンチ移動中


写真4 設置されたウィンチ


写真5 ウィンチ設置記念写真

ドームふじだより No. 32
−風呂上がり−


 気温が-70℃を下回ることの多くなったドームふじですが、最近隊員の間で流行っているのは、風呂上がりに裸のまま外に出てオーロラを見ることです。もちろん寒いので1分以内に基地の中に戻ります。瞬間的に冷えた後は体がポカポカして快適です。外に出ると写真1のように体から湯気が立ち上って真っ白になります。この時に濡れたタオルを振り回すと、だいだい20回転くらいでぱりぱりに凍り、写真2のようになります。
 湯冷めをして風邪を引かないか心配される方もあるかもしれませんが、大丈夫です。外界から完全に隔離されている現在の状況では、自分たちが持ち込んだ細菌やウイルスに対しては抵抗力がついていますし、新しい細菌やウイルスはやって来ないので、感染症である風邪は基本的には引かないのです。ただし、越冬が終わる頃に次の隊の隊員がやって来ると、新しい細菌やウイルスも一緒に持ち込まれ、急に風邪を引く隊員が増えます。 (写真モデル 藤田耕史隊員)


写真1 風呂上がりに外でタオルを振り回す


写真2 カチコチに凍ったタオル

ドームふじだより No. 33
−風呂とトイレ−


 ドームふじでの風呂とトイレを紹介します。風呂は水を有効に利用できる24時間循環式でなので、毎日入浴できます(写真1:モデル 栗崎高士隊員)。しかし、水はすべて雪を溶かして作るのでとても貴重で、節約して隊員1人当たり1日40L前後にしているため(もちろん炊事、食器洗いなどすべてを含みます)、1回の入浴では洗面器に2杯だけお湯を使ってよいことになっています。洗髪、洗濯は当直の日にだけ許可されています(8人で交代しているので8日に1回)。入浴の順番は平等に毎日替えています。
 トイレは小便と大便を別々に処理します。写真2は小便の方で、一旦下の青いタンクに蓄えた後、ポンプと圧縮空気で屋外に送り出されて処理されます。写真3は大便の方で(ここでは小便禁止です)、内側に見える青いビニールが連続した長い袋状になっていて、使用後に脇のペダルを踏むと20cm程下に下がり、口のところが熱で圧着されてパックされるようになっています。このパックされたものは下の箱に貯まり、3日ごとに当直者が屋外に置いてある空のドラム缶まで運んで移し替えます。


写真1 入浴中(モデル 栗崎隊員)


写真2 小便器


写真3 大便器